日本人のための宗教原論

 私は、因果関係の中で発生しているだけで、私という実体的な独自存在がどこかにあるわけではない。さらに、時間をはなれて同時的な相互依存関係という概念を持ち込めば、空間的関係の中で私が発生しているのがわかる。ニューロンのからまりが、なにか私という意識をつくっているだけで、ニューロンをほぐして、一本一本念入りに見ても、私はどこにもいない。
 私というのは、存在していて、存在していない。あらゆるものが、存在していて、存在していない。存在と非存在を超えるもの。それが、仏教の説く、「空」である。仏教というのは、明確な私の存在を意味するアートマンを説くヒンドゥー教に対するアンチテーゼ、むしろ、その対立を超えて止揚したものといえる。
 仏教は、空だけではなく、阿頼耶識とか、別の哲学体系がまじっている上に、日本において、いろんな宗派がでてきて、元型がわかりにくい。原理的なところを知るのに、ちょうどいい入門書だった。
日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか 小室 直樹 (著) 単行本 (2000/07) 徳間書店
新世紀の美徳―ヴァーチャス・リアリティ新世紀の美徳 宮崎 哲弥 朝日新聞社 (2000/06)宮崎 哲弥って実は仏教原理主義者だそうだ。社会批評の中に、仏教の解説がまざる。