技師は数字を愛しすぎた   ポワロ&ナルスジャック 創元推理文庫 4点

密室トリックが4つ含まれていて、今では使い古された感のあるトリックの組み合わせだ。ありそうな話で破綻はない。あとがきによると、作者は、古典的推理小説を、余暇と安定した良識にめぐまれたイギリスのミドルクラスの楽しみと批判し、この新しい推理小説では、変化する流動的な現代にあわせるために時事性をとりいれる(核燃料とか)ことにしたそうだ。しかし、結果的に、これは古典的なパズル小説にすぎない。文学的な深みはないし、魅力的なキャラもいない。これは暇人のためのパズルだろう。しかし、面白いので最後まで読んでしまった。昔、学校のある文学の先生に推理小説はどうかと聞いたら、そんなものつまらないもの読んでいる暇ないだろと怒られたことがある。推理小説は、文学からみるとかなり程度が低いもののようだ。そのへんの文学性の議論はチャンドラー(文学性がないと批判的)とか筒井康隆(売れているジャンルだから利用しようみたいな、うろおぼえ)とか坂口安吾(詰め将棋みたいな楽しさを肯定、うろおぼえ)とかいろいろあったはず。推理小説は、文学性はないのかもしれないけど、パズル性がくせになってついつい読んでしまう。
■あらすじ
○パリ郊外の原子力工場。叫び声があり、銃声が鳴り響き技師長のソルビエが殺されていた。現場に技師たち工場の人々がかけつけたが、犯人は消えていた。金庫があらされ核燃料チューブが消えている。逃げる場所のない密室状態だ。
○現場の封筒の指紋からモンジョという元ソルビエ家の運転手の存在が浮かび上がる。ベリアール技師とマルイユ警部(二人は旧友)、モンジョの家にいくとモンジョが撃たれた。銃声がして二人は、かけつけるが、また犯人が消えている。逃げる場所はない。p.109
○マルイユ警部は、撃たれた傷の回復したモンジョを尾行する。モンジョは、ソルビエの妻であったリンダの家にはいっていく。マルイユは、窓に砂利をなげて、でてきたリンダに、モンジョがいくので部屋の扉に鍵をかけるように警告する。モンジョが扉をやぶろうと、ぶつかる音がする。リンダはおびえているが、マルイユがいくとモンジョは消えている。逃げる場所などないのに。 p.146
○マルイユとベリアールがリンダの家に行くと銃声がする。二人が部屋へ行くとリンダは死んでいた。犯人はまた消えている。逃げる場所はないはず。
■回答 省略 そのうち書くかも