とーまのしんぞう

トーマの心臓   萩尾望都   可
マンガにしては読みにくい。どういう話なのか、なかなかつかめない。目的も不明、パターンも、この手の話を読みなれてないせいか把握しにくい。複雑な家族の話とか、ホモっぽい好き嫌いの話がつづくので退屈だった。しかし、ラストの数ページはもりあがる。(ネタばれ)ユーリの背中の傷は、愛する人からの暴力によって神への信仰を捨て、その人に愛を誓ったときのものだった。ユーリはそのときから、自分を愛される資格のない罪人だと思った。しかし、友人のオスカーの父への愛と自分への愛に気づき、ユーリは悟った。(イエスは裏切ると知っていてとがめずにユダをいかせた。イエスにもユダにもお互いに対して愛があったのだろう。自分は罪人、ユダであり、トーマは贖罪のためのイエスである。今、周囲の人間、神とトーマの愛と許しに気づく)。このあたりちょっと唐突なご都合主義的な終わらせ方で、ユーリの感じた愛と許しは個人的、主観的なものだ。死んだトーマや神は暗示するだけで、ほとんどユーリの感じ方の問題だ。だが、読み終わったあと、罪からの解放感があり、すがすがしい感じが残る。
トーマの心臓 マンガ