のるうぇいのもり

●のるうぇいのもり 村上  可+
○文体読みやすい。登場人物も少なく話はわかりやすい。
○主人公がもてまくり、セックスしまくり。願望充足のポルノ小説にちかいかも。女性も性的にオープンで積極的。性的描写も多く、露骨だ。そもそも、この小説のテーマは、性にまつわる、恋愛感情、寂しさ、肉体の不思議さなどを描くことにあるのだと思う。
○しかし、主人公は、ハンサムではないし、基本的にクールで孤独なタイプ。このへんで、もてない読者にも親近感が生まれるかもしれない。
下巻p203 緑から主人公に「私だってね、もっとハンサムな男の子が好きになりたかったわよ」
上巻p96「孤独が好きな人間なんていないさ。無理に友達を作らないだけだよ。そんなことしたってがっかりするだけだもの」
下巻p112「ある程度理解されなくても、まあこれはしかたないだろうと思っているだけです。あきらめてんです。」
○登場人物の半分くらいは、自殺。話がもりあがる。悲哀感がここちよい。
○ラストが不思議。主人公は緑に電話する。「あなた、今どこにいるの?」と緑は聞く。主人公はどこかわからない。<いったいここはどこなんだ? 僕の目にうつるのはいずこともなく歩きすぎていく無数の人々の姿だけった。僕はどこでもない場所の真ん中から緑を呼びつづけていた。> で終わる。ここは、どういう意味で、どんな効果を狙っているのか? 場所もわからない不安、誰だかわからない大衆の中に埋没してしまう孤独感が描かれているのだろう。そこでは、緑を呼ぶ声も、助けをもとめる悲鳴にちかいようだ。こんな悲鳴にちかい愛がなぜ最後にくるのか。ハッピー・エンドとはいいにくい影を落としている。だが、もともと、小説の冒頭が直子の死の回想の痛みに始まる、影のある小説なのだ。
○『ノルウェーの森』(ノルウェーのもり、"Norwegian Wood(This Bird Has Flown)")は、ビートルズの1965年のアルバム『ラバー・ソウル』収録の楽曲。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%A3%AE
ビートルズサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)というアルバムの影響を受けているそうだ。いつか聞いてみたい。
○脳腫瘍で狂って死ぬ緑の父親。
○登場人物
僕 ワタナベ    主人公
キズキ       自殺 主人公の友達
直子        キズキの彼女
永沢        東大生
ハツミ       永沢の彼女
小林 緑      書店の娘(妹)
石田玲子(レイコ) 音楽の先生、中年女性。
伊藤        美大の学生

ノルウェイの森 上