映画 デビルマン 2004年 不可
○感覚的に古いし、テレビレベルの作品だが、ふつうに見れた。昔やってた仮面ライダーとかウルトラマンとかこのレベルより低い話はいくらでもあった。それでも、つい見てしまったものだ。子供がみてもひどいなとは気づいていたが。
○美樹ちゃんが、なんとなくけばくて暗くてふてくされている。俳優は好みだがキャラがあってない。
○原作のジンメンが背中の甲羅に人質をとって俺を殺せないだろと、アキラをあおるところがいいのだが、ぜんぜん別の話になっている。最初、アキラが海へはいっていくのが意味がわからなかった。これは、おそらくジンメンが亀の遺伝子を持っているので海の中にいるとアキラが考えたのだろう。友人の助けを呼ぶ声が聞こえるのは「デビルイヤーは地獄耳」という特殊能力であろう。それを使って遠距離からジンメンを追跡してきたのだと思われる。そして、海岸沿いの森林の中にひそむジンメンを捜しあてる。こう考えると(もちろん推測にすぎないが)、話の筋は通っているのだが一般の観客には説明不足すぎてなんだかわからないと思う。
○この映画が説明不足すぎて場面がつながらず物語にはいりこめないのは、ひとつには、監督の妻が脚本を担当しているからではないのか? 夫婦の間なら説明抜きで「あれ」とか「これ」とかで通じても一般人にはさっぱりわからない。
○笑えるほど無防備に犯人にちかづき撃たれるカメラは、ロボットにもたせたカメラだったのだと脳内補完すればいい。小さな小指サイズの空中を浮遊するカメラである。デーモン研究所が初導入したロボットカメラで、まだ操作に不慣れであったとしよう。
○見かけ重視で演出されたのだろう。建物の中から自分で飛び出して撃たれていくデーモンは、屋内に毒ガスを数発ぶちこまれて飛び出すしかなかったのだと考えよう。もしくは、裏からも攻撃されていぶりだされたのだと補完する。
小錦はあまりにも有名タレントで、なんでこんなとこにでているのだろうと余計な情報がまじって、映画に没頭できない。悲壮な死のシーンだけど笑ってしまう。撃たれて、もがき苦しみながら死ぬのだが、その動きが太っているためユーモラスで、演技がいいかげんなので笑うしかない。なんとかしてほしい。これはリアリズムなのだと補完する。現実では、映画のように計算されて演出されない。こんなことはいくらでもあるのだ。
○すぐに逃げる警官隊とか、ぜんぜん発砲しない兵士とか、殺陣が隙だらけ。(相手が撃たないのは、少女が刀で反撃して相手を切り殺すというかっこいいシーンを撮るためである。撃たれたら刀は弱いからシーンがなりたたない。かっこよさを重視してリアリズムが犠牲になっている。) 数秒のシーンなので記憶からカット。もしくは、狙いがつけられないほどアキラたちの動きがすばやかったのだ、または、相手の精神を麻痺させるテレパシー能力を使ったのだと考える。
○原作では、アキラは、お互いに疑心暗鬼になり殺しあい、魔女狩りをつづける醜い人類に絶望し、戦う大義と目的を失う。悩んだ末、そうだおれにはまだ美樹がいたと気づき、今や、唯一の希望となった彼女を求めて家にいく。しかし、そこには美樹の首がころがっていた。アキラは、絶望のどん底にたたきおとされる。美樹を殺した人間どもに怒り、悪魔はおまえら人間のほうだと殺す。この精神的な過程がみどころのはず。なのに、ぜんぜん描けてない。もちろん、原作に忠実につくらなければならない義務もないのだが、改悪だろう。ヒステリックな大衆のこわさは一応描けていた。もうちょっと、アキラの家族の血みどろの抵抗がみたかったがあっさりとみんな殺される。
○毛虫の醜い半人半デーモン(ミーコ)が蝶へと変わるというシンデレラ的なアイディアはわりと気に入った。これは、希望が持てる明るい話でキャラがたっている。(なんでミーコは人間にもどったのだろうとかいっている人がいるけど、これは、毛虫から蝶に成長して、強くきれいになったという成長物語としてとるしかないだろう。彼女には、蝶のデーモンがはいっている。)
○ラストのCGは、なんとなく意味不明だが、映像的にはもりあがったと思う。
○細かいつっこみどころはたくさんあるけど、脳内補完しながら見ればだいじょうぶ。予算もないし(しかし数億円をどこに使ったのか? 海外取材旅行とか飲み会とか……。)、俳優も素人を使ってるし、こんなものだろう。それよりよい部分を拡大してみれば楽しめる。
○しかし、観客が補完しなければならない回数が増えるほど駄目映画といえる。あまりにも補完数が多すぎる。へたに原作を変えずに、完成度の高い原作どおりにつくればいいだけだったのに……。
○ポジティブにとらえれば、この作品は、観客が脳内補完しながら映画づくりに参加し、能動的に鑑賞できる自由度の高い作品なのである。
○時間の無駄なのでこの作品について考えるのはここまでにしたいと思う。
デビルマン (1) マンガのほうは、よかった。