アイリス IRIS 2001年【米・英】 6点

一言で言うと、妻のほうがアルツハイマーになり、死ぬ映画。びっくりするような展開はないので、少し退屈するし、悲惨すぎて、見てて重苦しい。部屋を荒らしたり、突然車から飛び出したり、行方不明になったり。夫のほうも悩み、ときに、どなったりするが、だんだんと、悲しい中にも、余裕がでてきて、愛を確かめ合ったり、よけいに愛が深まったり、冗談をいったり。
○ただ、妻もあばれまわるわけでもなく、おとなしいし、看護疲れで家庭崩壊してという極限状況は描かれていない。全体的に上品で、マイルドにしあがっている。基本的に老夫婦のラブロマンスが軸なのだろう。
○ときどき、妻が若い頃の映像がはさまれる。妻は、頭がよく、作家で、書いた本以外に他人のはいりこめない神秘的な芸術的精神を内面に秘めていた。容姿も人並み以上で(たぶん)、他の男とも寝たりしていた。それが、老女になりぼけてしまう。図式化してしまうと、「美女=ボケ老女」である。美女も数十年でこうなるのかと思えば、なんとなく、人生の悲しさを感じる。一方で、ボケ老女も、もともとは、絶世の美女なんだと思えば、世の中のボケ老女が光り始め、希望がわいてくる。ボケ老女の基礎には美女がいるということだ。価値の転倒の祝祭的な歓喜さえ生まれる。そう思えば、悲しい映画ながら、裏に楽しさを秘めた映画でもある。